RERA2023
今年度もゴム気球を用いた大気突入カプセル自由飛行実験 Rera (Rubber balloon experiment for reentry capsule with thin-type aeroshell) を予定しています。昨年度のRERA-1では、成層圏投下による自由フライト実験によって深宇宙サンプルリターンカプセルの姿勢不安定性を調べました。直径80 cmもののフルスケール形状のカプセルフライト実験は、気球を使ってならではのもので、貴重なフライトデータ(座標や加速度、画像など)が取得されました。詳細の一部はJAXA-RRにて報告しています。RERA-1カプセルの重心や慣性モーメントを採用した場合、姿勢は安定的であることが示されました。これはカプセル開発上大事な知見であるのですが、動的な姿勢不安定性現象の再現には至っていません。
RERA-1放球時の様子 |
自由フライト実験を用いたパラメータ研究
大気突入カプセルは重心をより後ろ側においた方が姿勢不安定化しやすいと考えられています。加えて姿勢安定性に関するパラメータとして”回転しづらさ”を示す慣性モーメントも重要です。したがって今年度の実験では、RERA-1カプセルに比べて、重心を後ろ側におき且つ慣性モーメントを高くすることで姿勢不安定化を意図するRERA-2と、重心位置をできるだけ維持し慣性モーメントを高くするRERA-3を用意し、フライト中の姿勢運動の違いを明らかにします。つまり、カプセルの姿勢不安定挙動と慣性モーメントの影響を調べることになります。一度の実験期間中に2個の放球を目指すことになり、これによってフライト実験とパラメータ研究という本来相反する性質の実験を両立するプラットフォーム構築も目標です。
RERA-2(左)とRERA-3(右) (非金属版(黒バンド)を機体背後に接着し重心等の質量特性を変更しています) |
今年も風任せ
RERA-2&-3実験の放球を目指してカプセル開発や各種試験など担当学生が尽力してくれています。ただ気球放球条件には高層風の振る舞いが非常に大きな影響を与えるらしく、RERA実験のGo/NoGoもそれに従います。今年も良い風が吹くことを祈っています。
Y. Takahashi, 2023/6/28