2025/07/22

ドイツ研究滞在記その2と国際学会での発表(FAR2025, ISFV21)

2025年 3月から6月の間,またまたドイツ航空宇宙センター(DLR)に研究のために滞在してきました.2年連続2回目の出場です.

DLRでは昨年同様に,プラズマを生成できるアーク風洞を使った通信ブラックアウトの再現とガス噴射による低減効果の実証を目的とした実験を実施しました.昨年トライしたところなかなか面白い結果が見られたので,再現性の確認や計測の高精度化などを行いました.

例によって実験に関する写真は載せられないので,観光日記みたいになってしまいますがお付き合いいただければと思います.


また,ドイツ滞在の最中にフランス・アルカションで開催された国際学会FAR(https://atpi.eventsair.com/far2025/)と,帰国後すぐに東京で開催されたISFV21(https://www.isfv21.org/)にて発表してきましたので,そのことについてもここで報告します.

DLRの門の前にて,たまたま来ていたDr. Ethiraj Venkatapathy(左)と著者(右), Köln


DLRでの2回目の滞在

今回で2回目の訪問で,DLRの方々と久しぶりに会えて懐かしく思いました.遠い異国にも友達がいるってなんだか不思議ですね.

ドイツは北海道よりも緯度が高いので夏は日中時間が長く,朝方の健康的な生活を送ることができました.滞在地はDLRのあるケルンまでトラム,S-Bahn,バスを乗り継いで80分くらいの場所にあるBergisch GladbachはLusthideというところにしました.昨年滞在したBonnに比べて田舎街で,森の中の閑静な住宅街といった感じの場所です.

Lusthide駅と路面電車1番.朝夕は10分に1本来るので街中までの移動に便利.


さてアーク風洞での実験について,いろんなトラブルがあったり途中で学会発表があったりと忙しなかったですが,なんとか期間内にやり切ることができました.実験の手順や装置なんかは昨年と同様なのですが,同等の通信環境を繰り返し再現し,安定的な低減効果を観測することは一筋縄ではいきませんでした.滞在最後の2週間は毎日実験で,課題の発見と改善を繰り返していたらあっという間でした.最終日は取れたてホヤホヤのデータをDLRの方々とNASA AmesのDr. Rajさんの前で発表しました.Rajさんの質問が鋭く,毎回 I'm not an expert but,...から始まっていたので変な汗かきながらDefenseしてました.


1318年創業のBrauhaus Sion(https://www.brauhaus-sion.de/en/)でいただいた,Kölschというケルン地方のビール.冷たくて日本のものより飲みやすい.下のコースターを被せるまで注がれるわんこそば形式.

国際学会その1:FAR2025

5月18-22日に行われた宇宙輸送と再突入ミッションに関する学会FARに参加して発表しました.FARはESA,DLR,CNESといったヨーロッパ中の宇宙機関がスポンサーになっているお金持ち学会で,毎年どこかのビーチサイドで実施されています.3回目の今回はフランス西海岸にあるArcachonという砂丘が有名な街で行われました.体感として,アカデミックな発表とプロジェクト関連の発表が半々くらいの割合でありました.

発表内容は昨年の滞在時に実施した通信ブラックアウトとガス噴射によるその低減実験についてでした.対面形式で国際学会に参加するのは初の経験で,同世代の学生や著名な研究者の方々とフランクにお話できる機会はとても貴重で楽しかったです.いつも論文ばかり読んでいると分からなくなりますが,それを書いている人がいるんだなあと当たり前のことに気付かされました.


発表する著者.300人くらい入るホールのステージで,DLRとの共同研究の成果について発表.気流条件が異なる2種類のプラズマについての説明をしているところ.


Arcachonの砂丘と鳥とパラグライダー.強風が常に吹いており,美しい風紋が見られます.


国際学会その2:ISFV21

帰国の次の日から東京で行われた可視化に関する学会ISFV21に参加して発表しました.ISFVは隔年で開催されている学会で,流体の可視化技術やその後処理などについての発表が多くありました.最近BOSが流行っているみたい.次回の開催地はマドリードだそうです.

発表内容はJAXAのアーク風洞で実施したシュリーレン可視化の試みについてです.分光計測を組み合わせることによって,それまで困難とされてきたアーク風洞の低圧環境下における可視化に成功したことを報告しました.この時の実験の内容は過去にこのブログにも記載しています(https://highenth.blogspot.com/2023/12/isas-5.html).

シュリーレン可視化結果について説明する著者.日本人の質問者と英語でやり取りするのはなんかむずむずしますね.

最終日に行った銭湯にて.日本帰ってきた実感が湧いてきた一杯でした.


おわりに

今回は3月から6月にかけてのDLR滞在と国際学会での2件の発表についてのよしなしごとを書き綴りました.海外渡航は機会も限られるしお金もかかるものですが,その中で築けたコミュニティはとても貴重なものですし,同じように考えている人たちの存在は自信にも繋がりました.何事にも言えるかと思いますが,えいやっと行ってみると案外なんとかなるものだと思います(n=1の生存性バイアスと言われればそれまでですが).特に,大学院にて海外渡航してみたいという方の参考となれば幸いです.

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2025年 3月から6月の間,またまたドイツ航空宇宙センター(DLR)に研究のために滞在してきました.2年連続2回目の出場です. DLRでは昨年同様に,プラズマを生成できるアーク風洞を使った通信ブラックアウトの再現とガス噴射による低減効果の実証を目的とした実験を実施しました.昨年...