アーク風洞実験
今年もこの時期がやってきました.当研究室ではJAXAが保有するアーク風洞を利用した実験を年に1回実施しています.アーク風洞は高温のプラズマ気流を生成することができるので,宇宙機が大気圏に突入する際の厳しい加熱環境を再現することができます.このプラズマによって通信途絶現象が生じるのですが,機体表面からガスを噴射することで通信できるようになるか,というのが実験のテーマです.今年の実験期間は10/16 ~ 10/20の1週間でした.過去2年分の試験の様子は当ブログで紹介しています.(2020年,2021年)アーク風洞は秋の季語といってもいいかも知れません.
実験キャンペーン
1週間の実験期間のうち,1日目と2日目は準備に充てます.風洞でガス噴射を行うために実験模型とガスボンベを接続したり,ガス噴射の様子を撮影するためにいろいろセッティングしたりと何かと時間がかかります.
昨年からの取り組みとして,シュリーレン撮影があります.シュリーレン法とは,空気の密度によって光の屈折率が変化することを利用して,空間の密度勾配を取得する実験手法です.この方法は古くから風洞実験で実施されているものの,アーク風洞での前例は多くありません.そのためいろいろと手探りで進めている最中です.今年はより強力な光源を用意して鮮明な画像を得ることが狙いのひとつでした.写真にもあるように,明るい青色LEDを光源として使用しています.直接見るとクラッとくるぐらいの明るさです.
実験結果
実験結果
数値解析の結果(奥)とシュリーレン撮影の結果(手前)を載せます.ガス噴射部の近傍に注目した図で,どちらも噴射部の直上に密度勾配の大きい領域が分布していることが分かります.その形状もおおよそ一致することが確認できました.光源のアップグレードと光学機器の調整に慣れてきたおかげで,昨年よりも広い視野で高品質の画像を撮影することができました.これから通信試験の結果も含めて実験結果の分析を進めていきます.それではまた来年.
T. Miyashita, 2023/12/1