2022/11/09

ISASアーク加熱風洞実験(令和4年度)


実験概要
 宇宙輸送工学研究室では毎年1回、JAXA相模原キャンパスにあるアーク加熱風洞を用いた実験を行っています。今年は10/17-21の日程で実験に行ってきました。今回も前年に引き続き、通信ブラックアウト低減化に関する実験です。
 通信ブラックアウトは大気再突入時に、プラズマが機体を包むことで起こる通信途絶です。アーク風洞ではこの現象を再現することが出来ます。前回の実験で、冷却気体の吹き出しによって、ブラックアウトが低減化できることが実証されました。
 今回の実験では、前年度の実験を再現すると共に、シュリーレン画像撮影により冷却気体が吹き出される様子を捉える事が目的です。

冷却気体の吹き出し
 昨年度と同様にアーク風洞内に設置した模型から窒素を吹き出しました。
 以下の写真は窒素の吹き出しなし(上)と吹き出しあり(下)それぞれの様子を撮影したものです。吹き出しありの写真の方では模型の上に光っている部分がはっきりと見えます。窒素がしっかりと吹き出されている証拠です。 
去年同様、気体を吹き出すことによる通信状況の改善も確認することが出来ました。



 さて、これで取り合えず去年の実験の再現性を得ることは出来ました。いよいよ肝心のシュリーレン画像の撮影です。

シュリーレン撮影
 アーク風洞内のシュリーレン画像撮影は、例が無かったので今年はうまくいく可能性は低いと思っていました。風洞内に光をまっすぐ通すために、風洞の窓を変えるなど大掛かりな作業を行ったので、実験が始まるまでドキドキでした。

 以下の画像は吹き出しありの吹き出しなし(上)と吹き出しあり(下)それぞれのシュリーレン画像の結果です。流れは右から左に流れています。画面で白く写っているのが模型で、黄色い線の場所に窒素の吹き出し口があります。
 
 吹き出しありの方には、模型の上にぼやっとした部分が見えます。この部分が吹き出した窒素が広がっている領域です。



 初めての試みで、吹き出した窒素を捉えることが出来たので、今回の実験は大成功といって過言ではないはずです。これも沢山の方々に手助け頂いたおかげです。

感想
 筆者は去年の実験にも参加していましたが、見学(ほとんど置物)でした。今回少しずつ作業を進めていく中で、実験を行う大変さが身に沁みて分かりました。
 すべての実験を終えて、ご助力頂いた方々への感謝の気持ちと達成感でいっぱいでした。その後、とんかつ赤城という店で大盛のカツカレーを食べました。お腹もいっぱいになりました。


Y. Sugihara, 2022/11/9

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