投稿論文Static attitude stability of deep space sample return capsule with thin aeroshellがCEAS Space Journalにアクセプトされました.本論文では,薄殻エアロシェル型カプセルの幅広い速度域における静的な安定性について,実験と解析の両面から評価しています.
Abstract
将来的なサンプルリターンとして,土星圏を対象としたサンプルリターンが計画されています.これまでのはやぶさカプセル形状と異なり,より軽量かつ大きな投影断面積の薄殻エアロシェル型カプセルであれば,地球帰還時の熱にも耐えられると考えられています.一方,軽量化のためパラシュートがなく,十分に減速するためには適切な姿勢で飛行する必要があります.そこで,本論文では,カプセルが流れ場に対し迎角を持って停止した際の静的安定性や基本的な空力性能,地球突入時の軌道について議論しました.
はやぶさカプセルは再突入時の速度が12 km/sであり,このときの最大空力加熱は15 MW/m2程度です.一方,薄殻エアロシェル型カプセルは再突入時の速度が15 km/sとより高速であるものの,最大空力加熱は10
MW/m2以下でした.これは,軽量かつ大面積により密度の薄い高高度から減速できたためと考えられます.
また,風洞試験と数値解析により迎角がついた際にカプセルに生じるモーメントが評価されました.これらの結果から,迎角変化を打ち消す方向に常にモーメントが生じること,すなわち静的に安定であることが確認されました.この静安定メカニズムとして,カプセル前面に生じる圧力差が主要因であることが解析結果から示唆されました.
図2 静的安定メカニズム [1]
投稿論文としての薄殻エアロシェル型カプセル関連はこれが初出になるため,これを元に次世代サンプルリターンカプセルについて発展させていければと思います.
その他
ここでは,Mach 0.14 - 4.0を対象しており,様々な流れ場条件を用いています.解析では計算条件を入力すればよいですが,ここまで幅広い流れ場を作れる風洞はありません.そのため,3つの風洞を用いてこれらの成果を得ました.風洞が変わるとアタッチメントや適切なカプセル直径等々が変わるため大変ですが,様々な風洞を利用する良い機会となったため,とても勉強になりました.
本論文のURLは下記の通りです.
https://link.springer.com/article/10.1007/s12567-024-00551-1
[1] Takasawa, H., Fujii, T., Takahashi, Y. et al. Static attitude
stability of deep space sample return capsule with thin aeroshell. CEAS Space J
(2024).
H. Takasawa
2024/05/14
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