2024/06/30

ゴム気球を用いた新型大気圏突入カプセルの飛行試験: RERA-4

RERA2024

今年度も2022年度RERA-12023年度のRERA-2,-3に引き続きゴム気球を用いた新型大気圏突入カプセルの飛行試験: RERA-4(Rubber balloon Experiment for Reentry capsule with thin-type Aeroshell)を予定しています。直径80㎝のフルスケールのカプセルを高度25㎞から投下し、自由飛行中の姿勢挙動を取得します。今までのフライト実験では重心位置・慣性モーメントをそれぞれ変更した機体で実験を行いましたが、結果はどれも安定的な飛行でした。今回のRERA-4では重心位置をさらに大きく後ろにすることで動的な不安定現象を再現することを狙っています。 

RERA-3放球時

機体設計

カプセルの機体設計では重心位置が姿勢の不安定化に対して重要なパラメータの1つになっています。基本的に重心位置が後方にあると不安定化しやすく、今回のRERA-4では不安定現象の再現のために重心位置をRERA-1,-2,-3よりも後方に位置させます。設計の目標重心位置は遷音速風洞試験や落下試験の結果を受けて決定しました。図を見ていただくとRERA-4RERA-2と比べて円筒部が長くなっているのがわかると思います。円筒部を長くし搭載機器を後ろにずらすことで重心位置を下げています。

RERA-2(左)とRERA-4(右)

神頼み

実験準備のために456月は相模原の宇宙科学研究所に来ていました。機体の製作と各種試験を実施し、無事に出来上がった実験機の発送を完了しました。ここまで来たらできることは祈ることのみで、宇宙科学研究所の近くの神社と北大近くの神社の2か所に成功祈願のお参りに行ってきました。今年こそ無事にくるくると不安定化してほしいです。

宇宙科学研究所近くの新田稲荷神社(左)と北大近くの札幌諏訪神社(右)


T. Yoshio, 2024/06/30





2024/06/04

機械学会若手優秀講演フェロー賞を受賞しました

 2023年9月に行われた日本機会学会年次大会にて,「ISAS 1MW アーク加熱風洞でのガス噴射による通信ブラックアウト低減化研究」というタイトルで発表しました.その発表が評価されまして,このたび「機械学会若手優秀講演フェロー賞(宇宙工学部門)」をいただきました.

機械学会年次大会での発表
 
2023年の学会は,東京都立大学南大沢キャンパスで開催されました.富山大学で開催された2022年の年次大会に続いて2年連続2回目の参加でした.今回の発表内容はISAS アーク風洞での実験と数値解析を合わせたもので,風洞内部でのシュリーレン撮影に成功したことを報告しました.
 学会では何度も参加するうちに顔なじみの先生方とお会いするようになり,発表の前後に楽しいお話ができました.これが対面開催の学会の醍醐味ですよね.研究や発表内容に関することだけでなく,人とのつながりも深まる場として,充実した時間を過ごすことができました.

そして受賞!
 発表からおよそ1ヶ月後に,こちらの賞の受賞の連絡をいただきました.この賞は若手研究者を対象としたもので,その年の機械学会関連の学会において優れた発表をした人に送られます.後日いただいた賞状や受賞楯には次のような立派な文言がありました.
 「あなたの上記講演は 内容が有益で新規性があり また発表の態度に優れ 若手研究者として将来の発展が期待されますので(以下略)」
 このように評価していただけるのは光栄で,恐縮するばかりです.フェロー賞という名前や,「将来の発展が期待される」という言葉が印象的で,宇宙工学部門の研究者の末席に仲間入りできたのかなと感じています.
 この受賞は,私一人では成し得なかったことです.研究を支えてくれた研究室メンバーやご指導いただいた先生方に心から感謝しています.みなさんのサポートがあってこその成果と感じています.この受賞を励みに,さらなる成果を目指してまいりますので,どうぞよろしくお願いいたします.

T. Miyashita

2024/06/01

1軸自由振動の新たなモデリング手法の提案 in Mechanical Engineering Journal

 投稿論文Dynamic instability modeling on phase plane for thin aeroshell capsule with pitching motion at transonic speedMechanical Engineering Journalにアクセプトされました.本論文では, Ma1.3の遷音速流れ場における1軸自由振動時の薄殻エアロシェル型カプセルの挙動について評価しています.また,薄殻エアロシェル型カプセルにおける運動挙動に対し新たなモデリング手法を提案しています.

 

Abstract

 将来的により遠方の土星圏を対象としたサンプルリターンが計画されており,そのカプセルとして薄殻エアロシェル型カプセルが提案されています.本カプセルの動的な挙動に着目するためにJAXA/ISASの遷音速風洞を用いて1軸自由振動試験が実施されました.また,慣性モーメントがどのような影響を及ぼすかについて評価しました.



遷音速風洞における1軸自由振動時の瞬時シュリーレン画像 [1]

 Ma1.3の遷音速域においては,一定の振幅で振動を続けるリミットサイクル現象が確認されました.また,慣性モーメントによりリミットサイクル時の振幅が変化しました.この慣性モーメントの影響を予測するために,振動履歴をモデリングしていきます.ここでは横軸迎角,縦軸角速度の相平面を描き,各加速度履歴を色分けしプロットします.

相平面プロット結果の一例 [1]

履歴としては円を描くように振動しますが,ここでは縦にプロットが並ぶ加速度履歴を再現するようにモデリングしました.これにより振動の成長期も含むモデリングが可能となります.この新たなモデルはある一つの結果から別の慣性モーメントの結果を定性的に予測することができました.また,相平面履歴からはやぶさ型カプセルと異なる運動メカニズムである可能性が示唆されました.

新たなモデルを用いた予測結果 [1]

 

新たなモデリング手法に至った経緯

 1軸の回転運動方程式は,二階微分方程式となります.これら方程式の係数が定数ではなく変数となります.ここで,そもそも二階微分方程式は現状どこまで一般化されているのか,どのような評価手法により二階微分方程式の特徴が考察されているかなど,物理よりも数学の分野に足を踏み入れたおかげで新しいモデリング手法を考えることができました.実際に実験結果と予測結果が定性的に一致したときは脳内麻薬がすごかったです.ありがとうございます.

 本論文のURLは下記の通りです.オープンアクセスです.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/mej/advpub/0/advpub_24-00053/_article/-char/en

[1] Takasawa, H., Fujii, T., Hirata, K., et al., Dynamic instability modeling on phase plane for thin aeroshell capsule with pitching motion at transonic speed, Mechanical Engineering Journal, Article ID 24-00053, Advance online publication May 31, 2024, Online ISSN 2187-9745.

 

H. Takasawa

2024/06/01

 

博士課程の過程(2024年度 STL研究室 卒業生)

 博士課程の卒業にあたり,「博士課程に進学するか否か迷っている方」「博士課程はどうだった?」「卒業後の進路は?」という点について,過去の自分自身が知りたそうなことを簡単に記載しておきます. 1. 博士課程に進学するか否か迷っている方へ  「人には人の博士課程があるので,様々な人に...