2022/05/26

ゴム気球を用いた新型大気突入カプセルの自由飛行実験: Rera

Rera
新しい大気突入カプセルの自由飛行実験を2022年6月下旬に予定しています。これは下記の気球実験概要の通り、北海道大樹町からカプセルを吊り下げたゴム気球を放球、高度30km程度まで上昇ののちにカプセルを投下し、自由飛行させることでそのあいだの姿勢データなどを取得するものとなります。最終的には海上着水します。
 ゴム気球を用いること、実験機もできるだけ簡便な開発とすることで、本来高コストな自由飛行実験の低コスト化を図る目的もあります。それにより多数実験回数を獲得することで、カプセル開発加速やシステム工学などに関連する教育的効果も見据えたものとなっています。
 実験名Reraは"Rubber balloon experiment for reentry capsule with thin-type aeroshell"のアクロニムとし、読みは「レラ」くらいな感じです。アイヌの言葉で「風」を意味しています。新千歳空港近くにも同じような名前のアウトレットモールがありますね!

Rera概要
気球実験概要


薄殻エアロシェルを用いたサンプルリターンカプセル
将来の深宇宙サンプルリターンを見据えたサンプルリターンカプセルの開発が進められています。軌道力学の要請から大気突入時の軌道速度は「はやぶさ」などより高いものとなり、従来のカプセルや地上実験設備では対応が難しい可能性が発生しました。この新しいコンセプトのカプセルは軽量で大面積のエアロシェルを利用することで、高高度で効率的な空力減速を果たし、軌道速度を低減するものとなります。空力加熱などが大幅に低減されることが見込まれますが、空力特性データの取得や改めての課題抽出が必要となり、その研究開発が国内大学や研究機関の研究者などで進められています。

動的な空力姿勢不安定性
最近話題になっているのはサンプルリターンカプセルの動的な空力姿勢不安定性です。動的な空力姿勢不安定とは、機体の姿勢運動が生じた際に空気力による減衰が適切に働かず、むしろ運動を促進し得る現象となります。これが生じる速度域は広く、超音速・遷音速・亜音速領域で確認されています。幅広い速度域を経験する大気突入カプセルにおいてこれは大きな問題で、薄殻エアロシェルカプセルでも検討が進められている状況にあります。Reraの研究上の動機も動的不安定性です。

参考
Reraに関しては、令和3年度大気球シンポジウムにおいてベースとなるアイデアが発表されております:ゴム気球を使った新型大気圏突入カプセルの低速領域の自由飛行試験

Y. Takahashi, 2022/5/26

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