2023/07/20

RERA-2 & RERA-3 放球が行われました

 RERAプロジェクト

当研究室では昨年度よりゴム気球を用いた大気突入カプセル自由飛行実験 RERA (Rubber balloon experiment for reentry capsule with thin-type aeroshell) を実施しています.パラシュートを必要としない薄殻型の新形状カプセルの自由飛行時の姿勢安定性を明らかにするため,高高度から模型を投下して姿勢データを取得します.昨年の実験の様子はこちらで報告しています.今年のRERAでは重心位置と慣性モーメントを変更した2機の放球を実施しました.

RERA-2 https://www.isas.jaxa.jp/topics/003452.html  

RERA-3 https://www.isas.jaxa.jp/topics/003453.html


 気球実験

実験は北海道の大樹町で実施しました.同じ道内とはいえ,北大からは車で4時間以上かかる場所です.

気球実験は気象条件が鍵なので風向きや天候が悪いとそれだけ実験期間が延びてしまいます.ですが今年も気象条件が素晴らしく良かったため,7月8日にRERA-2,9日にRERA-3と連日の放球になりました.放球の日は午前3時ころにホテル発,日の出とともに作業開始というような動きでした.

実験場に到着してから,電源を入れて最後の動作テストを実施しました.搭載センサーの値とカメラの画像がしっかり受信できたことを確認していよいよ放球です.天気は晴れ,地上もほぼ無風とこれ以上ない気象条件でした.特にRERA-3の時は風も雲も少なく,気球にぶら下がったカプセルが高度数kmまでまっすぐ上昇していく様子が地上からも見えました.

2つのカプセルは地上にデータを送りながら順調に高度を上げていき,切り離し高度に達しました.実はこの実験はここからが本番なのです.といっても見守ることしかできませんが...

気球から切り離されたカプセルは風に流されながら数十分間の自由飛行に移ります.この間もカプセルはデータを送信し続け,放球からおよそ2時間後に大樹町沖に着水しました.これで試験終了となります.日頃の行いがよかったのか,天候も味方して今年の実験も最短スケジュールで駆け抜けました.

今回とれた飛行データは昨年の結果と合わせて姿勢不安定性の議論が行われます.それについてもいずれ当ブログで紹介していきます!


朝日に照らされるRERA-2


青空に昇っていくRERA-3


T. Miyashita, 2023/7/20


2023/07/19

EUCASS国際学会

EUCASS

 EUCASS(2023/07/10-14)に現地スイスで参加しました.今回はブログで何度か紹介している自由振動試験についての結果をまとめ,発表しました.


空力不安定性と自由振動試験

空力不安定性は,カプセルが自由飛行時に振動・回転してしまう現象であり,効率的な空力減速を妨げることから低減化することが求められています.そこで,JAXAの遷音速風洞を用いて振動試験を実施し,カプセル形状を変更した際に低減化できるのか調べていました.

マッハ1.3の流れ場内で,一定の振幅で振動を続けるリミットサイクル現象が確認されました.これははやぶさカプセルと同様の傾向です.


Base model(左)と Ball model(右)

また,上記の図のように背面を膨らませることで,同程度の慣性モーメントに関わらず振幅が抑制されるという結果を得ることが出来ました.

ただ,この抑制の詳細なメカニズムはまだ不明なため,今度自由振動解析・強制振動解析により詳細を調べていければと思っています.


私たちの研究は主にピッチ・ヨー方向に振動を見ていますが,同じセッションにロケットのロールに関する同様の試験を実施している方がおり,少しお話しました.英語での会話はまだまだスムーズにできませんが,なんとか情報交換できたかと思います.


その他

2023年1月のスイスのビッグマック指数は世界1位で942円(日本は410円).ビッグマックは日本の2倍以上の値段ということで,とても物価が高いことがわかります.

そのため,市内の乗り物が乗り放題になるトラベルパスをホテルでもらえたのは,とてもたすかりました.

パンやお肉はとてもおいしく口に合ってよかったです.

ホテルでの朝食と筆者の指(左上)

H. Takasawa, 2023/07/19

オーストラリア気球実験への参加

 オーストラリア気球実験

豪州気球実験(2023/05/11)に見学者として参加してきました.


本試験の目的は,「はやぶさ型カプセルの遷音速・低速域における飛行安定性評価」と「パラシュートの性能検証」です.そのため,直径60cmのカプセルを高度約40kmから投下し,自由飛行させました.約2分の自由飛行後にパラシュートを展開,軟着陸と試験を成功させました.

常に無線でデータを送っているものの,データの送信量には限界があります.そのため,着陸したカプセルを回収し,データを吸い出すという流れになります.すなわち,着陸時やパラシュート開傘時の衝撃に耐えることのできる設計が必要となります.

私たちの研究室で実施している気球実験RERAとは異なり,陸地に着地するため,大量のデータを取得することが可能となっています.

大気球試験では,放球前日の夜中から作業を開始し,早朝に放球,夕方に大気球が着陸というとても長いスケジュールになっています.

私は一見学者でしたが,これまで積み上げてきた過程を少し知っていたため,大変な中無事に成功してよかったです.

空高く上がった大気球(中央)と筆者の指(左上)

関連HP

オーストラリアでの大気球実験記
https://www.isas.jaxa.jp/gallery/feature/isas/isas_20230605.html

オーストラリア気球実験B23-02の実施終了について 
https://www.isas.jaxa.jp/topics/003396.html



その他

今回の気球実験は,3-5月の期間で実施されていました.3月の最高気温は30度以上であり,5月の最低気温は0度と実験期間内の寒暖差がとても激しいです.

最初の方に現地入りした方々は半袖しか持ってきておらず,苦労していました.
実験期間が読めない場合はその辺も気をつけないと,と思いました.


H. Takasawa, 2023/07/19

博士課程の過程(2024年度 STL研究室 卒業生)

 博士課程の卒業にあたり,「博士課程に進学するか否か迷っている方」「博士課程はどうだった?」「卒業後の進路は?」という点について,過去の自分自身が知りたそうなことを簡単に記載しておきます. 1. 博士課程に進学するか否か迷っている方へ  「人には人の博士課程があるので,様々な人に...