2023/06/28

RERA-2&-3

RERA2023
今年度もゴム気球を用いた大気突入カプセル自由飛行実験 Rera (Rubber balloon experiment for reentry capsule with thin-type aeroshell) を予定しています。昨年度のRERA-1では、成層圏投下による自由フライト実験によって深宇宙サンプルリターンカプセルの姿勢不安定性を調べました。直径80 cmもののフルスケール形状のカプセルフライト実験は、気球を使ってならではのもので、貴重なフライトデータ(座標や加速度、画像など)が取得されました。詳細の一部はJAXA-RRにて報告しています。RERA-1カプセルの重心や慣性モーメントを採用した場合、姿勢は安定的であることが示されました。これはカプセル開発上大事な知見であるのですが、動的な姿勢不安定性現象の再現には至っていません。

RERA-1放球時の様子

自由フライト実験を用いたパラメータ研究
大気突入カプセルは重心をより後ろ側においた方が姿勢不安定化しやすいと考えられています。加えて姿勢安定性に関するパラメータとして”回転しづらさ”を示す慣性モーメントも重要です。したがって今年度の実験では、RERA-1カプセルに比べて、重心を後ろ側におき且つ慣性モーメントを高くすることで姿勢不安定化を意図するRERA-2と、重心位置をできるだけ維持し慣性モーメントを高くするRERA-3を用意し、フライト中の姿勢運動の違いを明らかにします。つまり、カプセルの姿勢不安定挙動と慣性モーメントの影響を調べることになります。
一度の実験期間中に2個の放球を目指すことになり、これによってフライト実験とパラメータ研究という本来相反する性質の実験を両立するプラットフォーム構築も目標です。

RERA-2(左)とRERA-3(右)
(非金属版(黒バンド)を機体背後に接着し重心等の質量特性を変更しています)

今年も風任せ
RERA-2&-3実験の放球を目指してカプセル開発や各種試験など担当学生が尽力してくれています。ただ気球放球条件には高層風の振る舞いが非常に大きな影響を与えるらしく、RERA実験のGo/NoGoもそれに従います。今年も良い風が吹くことを祈っています。

Y. Takahashi, 2023/6/28

2023/03/14

Publication Experience in Aerospace Science and Technology

Recently, we published a manuscript for our research on the fluid-structure interaction of inflatable membrane aeroshell in the renowned journal: Aerospace Science and Technology. This work developed a numerical framework for the fluid-structure interaction of flexible reentry vehicles validated by the transonic wind tunnel experiment focusing on the structural deformation and oscillatory behavior in the subsonic flow regime.

Research Summary

Inflatable aeroshells experience significant aerodynamic loads during atmospheric entry. The flexible membrane deforms by the aerodynamic forces, and such deformation changes the flow field, which can change the aerodynamic characteristics and increase the deformation even further. So, complex fluid-structure interaction problems appear during atmospheric entry. Thus, the aerodynamic characteristics during atmospheric entry must be adequately evaluated through fluid-structure coupled modelling for the reliable performance prediction of such vehiclesBased on this newly established model, aerodynamic behavior and coupled fluid-structural characteristics are systematically examined under subsonic conditions and verified by experimental wind tunnel investigation, with particular attention given to the transient oscillatory behavior of the membrane aeroshell that was found in the free flight test.


Fig. 1:  Experimental model 
 

Fig.2: Instantaneous velocity distribution

The results revealed that the decelerated flow generated a high-pressure region in the front and a low-pressure region in the rear of the aeroshell. The separated flow produced a vortex ring behind the aeroshell, creating a shear layer in the wake region. Oscillatory swing motion, caused by force from the fluid, was reproduced by effectively setting Young’s modulus of the membrane material. The oscillation frequency of the swing motion was the same as the lift and pitching moment oscillation frequency. This indicated that the swing motion also affected the aerodynamics of the vehicle.

Thoughts 

Aerospace Science and Technology is one of the most prestigious journals in aerospace engineering. The hardest part of publishing in this journal was preparing the response of the reviewers. In this case, the experts provided critical questions we had to respond to. There were several sources of error in the wind tunnel experiment, and it took an effort to find out and sensibly portray the limitations. Without the help of the co-authors, it would not be possible. Writing and publishing a manuscript is challenging; however, I enjoyed the whole process. It made me feel worthy and satisfied and enhanced my writing skills.

Manuscript

The published manuscript can be accessed at the following URL:

Saha, SK, Tobari, J., Takahashi, Y., Oshima, N., Moriyoshi, T., Yamada, K., & Shibata, R. (2023). Fluid-Structure Interaction Characteristics of Inflatable Reentry Aeroshell at Subsonic Speed. Aerospace Science and Technology, 108112.

Sanjoy Kumar Saha
March 10, 2023

2022/12/13

ISAS遷音速風洞実験(令和4年度)


実験概要
 遅ればせながら、10月にJAXA相模原キャンパスにて遷音速風洞を使用した1軸自由振動試験の報告です。私は17日から21日までの一週間で参加し、7月に行われた気球実験RERA(Rubber balloon Experiment for Reentry capsule with thin-type Aeroshell)の形状のモデルの安定性についての試験を見学してきました。

実験模型

 上の写真の模型がマッハ0.3の気流にさらされ、左右に振動します。設計の都合上、非常に薄くなっている箇所があり通風中は壊れてしまわないか大変ひやひやしました。後ろの細い管は圧力を測るための配管です。これは大変高価なものであり、配線を切ってしまったり配管を壊したりした際には僕みたいな下っ端では何回土下座をしても許されないため、慎重に扱う必要がありました。
 結果としては模型が壊れることなく安定に振動し、データをとることができました。今後この結果についての解析を行い実験結果との比較を行いたいです。

感想
 実際に風洞に行き目で見ることで実験の流れや装置の仕組みについてより深く理解することができました。また、他大の方々とも交流でき刺激になりました。行けて良かったです。
 最終日にはJAXA、ISASの特別公開があり、祭りの雰囲気を少し楽しみながらはやぶさ焼きそばを食べました(写真は取り損ねた)。海苔が飾られていてはやぶさのソーラーパネルを模している焼きそばでした。おいしかったです。 

T. Yoshio, 2022/12/13

2022/11/09

ISASアーク加熱風洞実験(令和4年度)


実験概要
 宇宙輸送工学研究室では毎年1回、JAXA相模原キャンパスにあるアーク加熱風洞を用いた実験を行っています。今年は10/17-21の日程で実験に行ってきました。今回も前年に引き続き、通信ブラックアウト低減化に関する実験です。
 通信ブラックアウトは大気再突入時に、プラズマが機体を包むことで起こる通信途絶です。アーク風洞ではこの現象を再現することが出来ます。前回の実験で、冷却気体の吹き出しによって、ブラックアウトが低減化できることが実証されました。
 今回の実験では、前年度の実験を再現すると共に、シュリーレン画像撮影により冷却気体が吹き出される様子を捉える事が目的です。

冷却気体の吹き出し
 昨年度と同様にアーク風洞内に設置した模型から窒素を吹き出しました。
 以下の写真は窒素の吹き出しなし(上)と吹き出しあり(下)それぞれの様子を撮影したものです。吹き出しありの写真の方では模型の上に光っている部分がはっきりと見えます。窒素がしっかりと吹き出されている証拠です。 
去年同様、気体を吹き出すことによる通信状況の改善も確認することが出来ました。



 さて、これで取り合えず去年の実験の再現性を得ることは出来ました。いよいよ肝心のシュリーレン画像の撮影です。

シュリーレン撮影
 アーク風洞内のシュリーレン画像撮影は、例が無かったので今年はうまくいく可能性は低いと思っていました。風洞内に光をまっすぐ通すために、風洞の窓を変えるなど大掛かりな作業を行ったので、実験が始まるまでドキドキでした。

 以下の画像は吹き出しありの吹き出しなし(上)と吹き出しあり(下)それぞれのシュリーレン画像の結果です。流れは右から左に流れています。画面で白く写っているのが模型で、黄色い線の場所に窒素の吹き出し口があります。
 
 吹き出しありの方には、模型の上にぼやっとした部分が見えます。この部分が吹き出した窒素が広がっている領域です。



 初めての試みで、吹き出した窒素を捉えることが出来たので、今回の実験は大成功といって過言ではないはずです。これも沢山の方々に手助け頂いたおかげです。

感想
 筆者は去年の実験にも参加していましたが、見学(ほとんど置物)でした。今回少しずつ作業を進めていく中で、実験を行う大変さが身に沁みて分かりました。
 すべての実験を終えて、ご助力頂いた方々への感謝の気持ちと達成感でいっぱいでした。その後、とんかつ赤城という店で大盛のカツカレーを食べました。お腹もいっぱいになりました。


Y. Sugihara, 2022/11/9

2022/08/08

大学院講義 (2022):大気突入機設計特論

大学院講義
2022年7月25日--8月4日の期間において Hokkaido Summer Institute 科目の宇宙飛翔体設計特論 (Design of Spaceflight Vehicles) を開講しました。今回は久しぶりに対面で行っています。

宇宙から地上に帰還する大気突入・緩降下・着陸 (Entry, Descent, and Landing; EDL) 過程と宇宙機の開発に関するお話がこの科目の主な内容になります。
今回はわたし(高橋)の他に、2名の外部招へい講師による講義を行いました。

以下がそのトピックです:
1. EDL概要
2. 軌道力学の基礎
3. 数値流体力学の基礎
4. 等エントロピー過程とラバールノズル
5. 衝撃波と衝撃波管
6. 2次元流れ
7. 高温気体モデルと空力加熱
8. 惑星大気突入プラズマと通信ブラックアウト
9. 空力特性と空力不安定性
(10. 流体構造連成解析モデル): スキップ
11-12. 宇宙ミッション(山田和彦准教授, JAXA)
13-16. 高エンタルピー風洞とEUにおける宇宙ミッション (Prof. Gülhan, DLR)

この講義では受講者向けに軌道解析コードと非構造格子圧縮性流体向けのCFDコードも公開しました。教育目的で自由に使えるものです。Python3で書いています。今年の3月より苦労して作っていたものですが、しかし、さて、使ってもらったのでしょうか...。

ノズル流れのCFDです。ノズル出口で適正膨張しています。

招へい講師とのディスカッション
招へいを伴う大学院講義ではやはり講師の方々との講義後のディスカッションがもう一つの目的になります。これまでの研究や今後の研究について研究室との学生も含めて話し合いの機会も作ることができました。

その後
2週間で全14,15回の集中講義は、講義する方も受講する方もやはり大変で非常に疲れ...良い思い出になりました。あと再講義も行います。

ウェブサイト
講義の詳細はこちらのウェブサイトに記載があります。

Y. Takahashi, 2022/8/8

2022/07/04

気球実験:新型大気突入カプセルの自由飛行実験RERA

気球実験

薄殻型カプセルの空力不安定性(カプセルが回転してしまう現象)について調べるために気球実験を実施しました。場所は北海道の大樹町というところです。

https://www.isas.jaxa.jp/topics/003122.html


気球実験では、風向きが大事になります。

地上では無風に近く、上空では海に向かって風が吹いている必要があります。

このような風は早朝にできるため、朝早くからの実験となりました。


午前1時ころにホテルを出発し、現場に向かいます。

とても朝早いですね。朝と言っていいのかわかりませんが……。


その後は、動作を確認し、いざ放球です。

今回の試験では、放球後に何もできないのでデータを見守ることしかできません。



カプセルが上空に行き、地上へ戻ってくるまですごくドキドキしていましたが

大きな問題もなく着水!無事に試験を終えることができました!わーい!


この後は、試験結果を眺めながらあれこれ議論となります。

本番の独特な緊張感はとても良い経験となりました。



その他


ホテル大宝というところに宿泊しましたが、夕飯が和食でとてもおいしかったです。間違えなく健康になりました。もうあの頃の生活には戻れない……。


 

H. Takasawa, 2022/07/04


2022/05/26

ゴム気球を用いた新型大気突入カプセルの自由飛行実験: Rera

Rera
新しい大気突入カプセルの自由飛行実験を2022年6月下旬に予定しています。これは下記の気球実験概要の通り、北海道大樹町からカプセルを吊り下げたゴム気球を放球、高度30km程度まで上昇ののちにカプセルを投下し、自由飛行させることでそのあいだの姿勢データなどを取得するものとなります。最終的には海上着水します。
 ゴム気球を用いること、実験機もできるだけ簡便な開発とすることで、本来高コストな自由飛行実験の低コスト化を図る目的もあります。それにより多数実験回数を獲得することで、カプセル開発加速やシステム工学などに関連する教育的効果も見据えたものとなっています。
 実験名Reraは"Rubber balloon experiment for reentry capsule with thin-type aeroshell"のアクロニムとし、読みは「レラ」くらいな感じです。アイヌの言葉で「風」を意味しています。新千歳空港近くにも同じような名前のアウトレットモールがありますね!

Rera概要
気球実験概要


薄殻エアロシェルを用いたサンプルリターンカプセル
将来の深宇宙サンプルリターンを見据えたサンプルリターンカプセルの開発が進められています。軌道力学の要請から大気突入時の軌道速度は「はやぶさ」などより高いものとなり、従来のカプセルや地上実験設備では対応が難しい可能性が発生しました。この新しいコンセプトのカプセルは軽量で大面積のエアロシェルを利用することで、高高度で効率的な空力減速を果たし、軌道速度を低減するものとなります。空力加熱などが大幅に低減されることが見込まれますが、空力特性データの取得や改めての課題抽出が必要となり、その研究開発が国内大学や研究機関の研究者などで進められています。

動的な空力姿勢不安定性
最近話題になっているのはサンプルリターンカプセルの動的な空力姿勢不安定性です。動的な空力姿勢不安定とは、機体の姿勢運動が生じた際に空気力による減衰が適切に働かず、むしろ運動を促進し得る現象となります。これが生じる速度域は広く、超音速・遷音速・亜音速領域で確認されています。幅広い速度域を経験する大気突入カプセルにおいてこれは大きな問題で、薄殻エアロシェルカプセルでも検討が進められている状況にあります。Reraの研究上の動機も動的不安定性です。

参考
Reraに関しては、令和3年度大気球シンポジウムにおいてベースとなるアイデアが発表されております:ゴム気球を使った新型大気圏突入カプセルの低速領域の自由飛行試験

Y. Takahashi, 2022/5/26

第34回スペース・エンジニアリング・コンファレンスにて最優秀ポスター賞を受賞しました

  2025年12月19-20日にて開催された日本機械学会第34回スペース・エンジニアリング・コンファレンス [SEC’25]にて,「群知能アルゴリズムを⽤いた超⼩型衛星GNSSデータに基づく地球超低軌道の大気密度推定」という題名でポスター発表を行いました.そして,最優秀ポスター...