2024/06/04

機械学会若手優秀講演フェロー賞を受賞しました

 2023年9月に行われた日本機会学会年次大会にて,「ISAS 1MW アーク加熱風洞でのガス噴射による通信ブラックアウト低減化研究」というタイトルで発表しました.その発表が評価されまして,このたび「機械学会若手優秀講演フェロー賞(宇宙工学部門)」をいただきました.

機械学会年次大会での発表
 
2023年の学会は,東京都立大学南大沢キャンパスで開催されました.富山大学で開催された2022年の年次大会に続いて2年連続2回目の参加でした.今回の発表内容はISAS アーク風洞での実験と数値解析を合わせたもので,風洞内部でのシュリーレン撮影に成功したことを報告しました.
 学会では何度も参加するうちに顔なじみの先生方とお会いするようになり,発表の前後に楽しいお話ができました.これが対面開催の学会の醍醐味ですよね.研究や発表内容に関することだけでなく,人とのつながりも深まる場として,充実した時間を過ごすことができました.

そして受賞!
 発表からおよそ1ヶ月後に,こちらの賞の受賞の連絡をいただきました.この賞は若手研究者を対象としたもので,その年の機械学会関連の学会において優れた発表をした人に送られます.後日いただいた賞状や受賞楯には次のような立派な文言がありました.
 「あなたの上記講演は 内容が有益で新規性があり また発表の態度に優れ 若手研究者として将来の発展が期待されますので(以下略)」
 このように評価していただけるのは光栄で,恐縮するばかりです.フェロー賞という名前や,「将来の発展が期待される」という言葉が印象的で,宇宙工学部門の研究者の末席に仲間入りできたのかなと感じています.
 この受賞は,私一人では成し得なかったことです.研究を支えてくれた研究室メンバーやご指導いただいた先生方に心から感謝しています.みなさんのサポートがあってこその成果と感じています.この受賞を励みに,さらなる成果を目指してまいりますので,どうぞよろしくお願いいたします.

T. Miyashita

2024/06/01

1軸自由振動の新たなモデリング手法の提案 in Mechanical Engineering Journal

 投稿論文Dynamic instability modeling on phase plane for thin aeroshell capsule with pitching motion at transonic speedMechanical Engineering Journalにアクセプトされました.本論文では, Ma1.3の遷音速流れ場における1軸自由振動時の薄殻エアロシェル型カプセルの挙動について評価しています.また,薄殻エアロシェル型カプセルにおける運動挙動に対し新たなモデリング手法を提案しています.

 

Abstract

 将来的により遠方の土星圏を対象としたサンプルリターンが計画されており,そのカプセルとして薄殻エアロシェル型カプセルが提案されています.本カプセルの動的な挙動に着目するためにJAXA/ISASの遷音速風洞を用いて1軸自由振動試験が実施されました.また,慣性モーメントがどのような影響を及ぼすかについて評価しました.



遷音速風洞における1軸自由振動時の瞬時シュリーレン画像 [1]

 Ma1.3の遷音速域においては,一定の振幅で振動を続けるリミットサイクル現象が確認されました.また,慣性モーメントによりリミットサイクル時の振幅が変化しました.この慣性モーメントの影響を予測するために,振動履歴をモデリングしていきます.ここでは横軸迎角,縦軸角速度の相平面を描き,各加速度履歴を色分けしプロットします.

相平面プロット結果の一例 [1]

履歴としては円を描くように振動しますが,ここでは縦にプロットが並ぶ加速度履歴を再現するようにモデリングしました.これにより振動の成長期も含むモデリングが可能となります.この新たなモデルはある一つの結果から別の慣性モーメントの結果を定性的に予測することができました.また,相平面履歴からはやぶさ型カプセルと異なる運動メカニズムである可能性が示唆されました.

新たなモデルを用いた予測結果 [1]

 

新たなモデリング手法に至った経緯

 1軸の回転運動方程式は,二階微分方程式となります.これら方程式の係数が定数ではなく変数となります.ここで,そもそも二階微分方程式は現状どこまで一般化されているのか,どのような評価手法により二階微分方程式の特徴が考察されているかなど,物理よりも数学の分野に足を踏み入れたおかげで新しいモデリング手法を考えることができました.実際に実験結果と予測結果が定性的に一致したときは脳内麻薬がすごかったです.ありがとうございます.

 本論文のURLは下記の通りです.オープンアクセスです.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/mej/advpub/0/advpub_24-00053/_article/-char/en

[1] Takasawa, H., Fujii, T., Hirata, K., et al., Dynamic instability modeling on phase plane for thin aeroshell capsule with pitching motion at transonic speed, Mechanical Engineering Journal, Article ID 24-00053, Advance online publication May 31, 2024, Online ISSN 2187-9745.

 

H. Takasawa

2024/06/01

 

2024/05/23

エアフィルム効果によるブラックアウト低減実験の論文

以前からこちらのブログでも紹介していた,エアフィルム効果による通信ブラックアウトの低減に関する実験(リンク:https://highenth.blogspot.com/2023/12/isas-5.html )の成果が, Mitigation of Reentry Blackout via Gas Injection in Arc-heated Facility としてJournal of Physics D: Applied Physicsにアクセプトされました.本論文では,ガス噴射による通信ブラックアウト低減効果について,数値解析と風洞実験を活用して議論しています.

論文の概要

通信ブラックアウトは大気圏に突入する際に,カプセルと地上局との通信が途絶する現象のことで,カプセルの観測データや位置情報が一時的にモニターできなくなります.これは高速で飛行するカプセル前方に生じる強い衝撃波によって生成したプラズマによって通信電磁波が減衰・遮蔽されることによって生じます.通信ブラックアウトを低減することは宇宙輸送技術の安全性や宇宙環境利用ミッションの柔軟性向上の観点から重要です.
  大気圏再突入時に生じる別の課題として,空力加熱現象があります.衝撃波によって高温になった周辺気体のため宇宙機が加熱され,内部の機器や採取したサンプルに深刻なダメージが及ぶ恐れがあります.

図 1:大気突入時の宇宙機に生じる通信ブラックアウト現象 [1]

  ここで対象としているガス噴射によるエアフィルムの形成という手法は,この2つの課題に同時に対処できる可能性があります.噴射したガスが宇宙機の表面に薄く広く分布することで,その内部が電磁波の伝播経路の役割を果たし,通信を可能にします.また,高温プラズマガスと宇宙機との間で断熱層として作用し,機体への熱の侵入を防ぎます.
  本論文では,おもに通信ブラックアウト低減効果について風洞実験と数値解析によって示しています.アーク加熱風洞内部で行なった通信試験および対応する数値解析により,噴射したガスがエアフィルム層を形成すること,その内部はプラズマが少なく電磁波が伝播できること,実際にガス噴射によって通信が改善されることが明らかになりました.数値解析によって加熱率の低減効果も示唆されたため,今後は空力加熱への対策としても研究を展開するのも面白いかもしれません.

図 2:ガス噴射による低プラズマ領域の形成 [1]
あとがき
 今回で私が論文を出版したのは2回目です.数値解析だけの1回目と違って今回は実験結果も含まれるので,この低減手法に関する議論を深化させることができたかと思います.実験と数値解析は研究の両輪であり,組み合わせることで説得力のある研究となるのだと感じました.両方やる分たくさん失敗もしましたが,学ぶことも多くありました.

論文

 本論文は以下から確認できます.

  1. T. Miyashita, Y. Sugihara, Y. Takahashi, Y. Nagata, and H. Kihara, “Mitigation of reentry blackout via gas injection in arc-heating facility”, Journal of Physics D: Applied Physics, 2024. https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6463/ad4718#sidr-main

T. Miyashita



2024/05/17

オープンCAEシンポジウム2023優秀学生講演賞受賞報告

こんにちは.修士2年の酒井智基です.
昨年(2023年)の12月7~9日に横浜にて開催されたオープンCAEシンポジウム2023に参加し,優秀学生発表として表彰いただきました.遅ればせながら,学会の参加&受賞報告をいたします.

・12/6 前日入り
オープンCAEシンポジウムは12/7に講習会,12/8,9にシンポジウムという日程でした.今回研究室からは私と計算流体B4の中道君で参加し,前日入りして中華街に行きました.会場と宿泊しているホテルの近所にあり,夕飯はこちらで食べました.

強そうな4人組
担々麵とチャーハンのセットがあったら,選ばないわけにはいきません.
大変おいしゅうございました.

・12/7 講習会
いくつか講座の選択肢があり,私と中道君はOpenModelica,PyVista,OpenRadiossに関する講座を受けました.日頃使っているシミュレーションプログラムとは全く違うものでしたが,条件設定スクリプトの書き方,OSSならではの利用の難しさなど,様々な知見を得ることができ,良い経験になったと思います.中道君の方が僕よりも何倍もプログラム等に詳しいので,隣でよく助けてもらいました.
ありがとう,中道君.

・12/8 シンポジウム1日目
シンポジウム初日は中道君の発表がありました.初めての学会発表とは思えないほど堂々と発表していて,感銘を受けました.(私の初発表の時はガチガチでした.)
発表する中道君

夕飯は発表お疲れ様会ということで,二人で 焼肉に行きました.お疲れ様,中道君.
これは牛タンです.開かずに焼くというのを初めて知りました.
大変おいしゅうございました.

・12/9 シンポジウム2日目
この日は私の発表がありました.4度目の学会発表でしたので流石に緊張せず,いつも通りにできたのではないかと思います.私の研究は最適化に関するものですが,同様に最適化に取り組んでいらっしゃる先生方から質問コメントをいただき,大変ありがたかったです.
撮影ありがとう,中道君.

シンポジウムの最後の表彰式にて,学生優秀発表として表彰していただきました.日ごろご指導いただいている高橋先生,先輩方のおかげです.感謝いたします.
大学で高橋先生にとっていただいた写真です.
寝起きだったので顔はご勘弁ください.

・最後に
オープンCAEシンポジウムはとても懐の広い学会でした.大学の先生方のみならず、様々なバックグラウンドをもつ方々が自由にシミュレーション結果を発表されていて,とても和気あいあいとしていました.このような場で発表できたこと,表彰いただいたことを大変うれしく思っております.

2024/05/14

薄殻エアロシェル型カプセルの静的安定性研究 in CEAS Space Journal

 投稿論文Static attitude stability of deep space sample return capsule with thin aeroshellCEAS Space Journalにアクセプトされました.本論文では,薄殻エアロシェル型カプセルの幅広い速度域における静的な安定性について,実験と解析の両面から評価しています.

 

Abstract

 将来的なサンプルリターンとして,土星圏を対象としたサンプルリターンが計画されています.これまでのはやぶさカプセル形状と異なり,より軽量かつ大きな投影断面積の薄殻エアロシェル型カプセルであれば,地球帰還時の熱にも耐えられると考えられています.一方,軽量化のためパラシュートがなく,十分に減速するためには適切な姿勢で飛行する必要があります.そこで,本論文では,カプセルが流れ場に対し迎角を持って停止した際の静的安定性や基本的な空力性能,地球突入時の軌道について議論しました.


1 薄殻エアロシェル型カプセル [1]

 はやぶさカプセルは再突入時の速度が12 km/sであり,このときの最大空力加熱は15 MW/m2程度です.一方,薄殻エアロシェル型カプセルは再突入時の速度が15 km/sとより高速であるものの,最大空力加熱は10 MW/m2以下でした.これは,軽量かつ大面積により密度の薄い高高度から減速できたためと考えられます.

 また,風洞試験と数値解析により迎角がついた際にカプセルに生じるモーメントが評価されました.これらの結果から,迎角変化を打ち消す方向に常にモーメントが生じること,すなわち静的に安定であることが確認されました.この静安定メカニズムとして,カプセル前面に生じる圧力差が主要因であることが解析結果から示唆されました.

2 静的安定メカニズム [1]

 

 投稿論文としての薄殻エアロシェル型カプセル関連はこれが初出になるため,これを元に次世代サンプルリターンカプセルについて発展させていければと思います.

その他

 ここでは,Mach 0.14 - 4.0を対象しており,様々な流れ場条件を用いています.解析では計算条件を入力すればよいですが,ここまで幅広い流れ場を作れる風洞はありません.そのため,3つの風洞を用いてこれらの成果を得ました.風洞が変わるとアタッチメントや適切なカプセル直径等々が変わるため大変ですが,様々な風洞を利用する良い機会となったため,とても勉強になりました.


本論文のURLは下記の通りです.

https://link.springer.com/article/10.1007/s12567-024-00551-1

[1] Takasawa, H., Fujii, T., Takahashi, Y. et al. Static attitude stability of deep space sample return capsule with thin aeroshell. CEAS Space J (2024).

 

H. Takasawa

2024/05/14

2023/12/01

ISAS アーク風洞実験(令和5年)

 アーク風洞実験

    今年もこの時期がやってきました.当研究室ではJAXAが保有するアーク風洞を利用した実験を年に1回実施しています.アーク風洞は高温のプラズマ気流を生成することができるので,宇宙機が大気圏に突入する際の厳しい加熱環境を再現することができます.このプラズマによって通信途絶現象が生じるのですが,機体表面からガスを噴射することで通信できるようになるか,というのが実験のテーマです.今年の実験期間は10/16 ~ 10/20の1週間でした.過去2年分の試験の様子は当ブログで紹介しています.(2020年2021年)アーク風洞は秋の季語といってもいいかも知れません.

    

実験キャンペーン

    1週間の実験期間のうち,1日目と2日目は準備に充てます.風洞でガス噴射を行うために実験模型とガスボンベを接続したり,ガス噴射の様子を撮影するためにいろいろセッティングしたりと何かと時間がかかります.
    昨年からの取り組みとして,シュリーレン撮影があります.シュリーレン法とは,空気の密度によって光の屈折率が変化することを利用して,空間の密度勾配を取得する実験手法です.この方法は古くから風洞実験で実施されているものの,アーク風洞での前例は多くありません.そのためいろいろと手探りで進めている最中です.今年はより強力な光源を用意して鮮明な画像を得ることが狙いのひとつでした.写真にもあるように,明るい青色LEDを光源として使用しています.直接見るとクラッとくるぐらいの明るさです.




実験結果

    数値解析の結果(奥)とシュリーレン撮影の結果(手前)を載せます.ガス噴射部の近傍に注目した図で,どちらも噴射部の直上に密度勾配の大きい領域が分布していることが分かります.その形状もおおよそ一致することが確認できました.光源のアップグレードと光学機器の調整に慣れてきたおかげで,昨年よりも広い視野で高品質の画像を撮影することができました.これから通信試験の結果も含めて実験結果の分析を進めていきます.それではまた来年.



T. Miyashita, 2023/12/1

2023/10/16

Boeing Externship Program 2023 (awarded Champions title)

This is Liu. I am glad to share my experience in joining Boeing Japan University Externship. It contains lectures about sustainable aviation, supplier management, global service, technologies, etc. Students are asked to present their solutions to a problem that current aviation faces. My team proposes an algae-sustainable aviation fuel (SAF) solution to tackle the problem of carbon dioxide emission. Our proposal won the on-campus primary competition and joined the Boeing University Summer Seminar 2023. As a result, we won the Boeing University Summer Seminar 2023 Champions title (best presentation/proposal).

To talk about aviation's carbon emissions, it accounts for 2.5% of global emissions. Airports are a major cause of emissions, and airports in Japan emit 3.87 million tons of CO2 annually. People are trying to use hydrogen to tackle the problem. However, is using hydrogen as aviation propulsion fuel truly zero emission? More than 95% of hydrogen production is grey hydrogen, that is, CO2, as a by-product of hydrogen.

Thus, we introduce algae to absorb CO2 emissions. Algae can produce fuels and other products efficiently. This is how our solution works. We like to collect CO2 in the hydrogen factory and use it to cultivate algae and use algae to produce SAF for the aircraft. It is a win-win for hydrogen aircraft and original aircraft. We also plan to grow algae near the airport to absorb the airport emissions and support algae SAF production.

There are some difficulties, like technical problems in algae to SAF transformation. Nevertheless, if we cooperate with other companies, the problem will be solved quickly, and the cost can be lowered. Overall, algae is a profitable way to reach zero emissions.

When constructing the proposal, it is necessary to consider both feasibility and cost. The order of the presentation is also essential to catch the audience’s eyes. Attending this event strengthened my presentation, creative thinking, leadership, and teamwork skills. I appreciate having this chance to win the title.


Liu Mu-An, 2023/10/9 

第34回スペース・エンジニアリング・コンファレンスにて最優秀ポスター賞を受賞しました

  2025年12月19-20日にて開催された日本機械学会第34回スペース・エンジニアリング・コンファレンス [SEC’25]にて,「群知能アルゴリズムを⽤いた超⼩型衛星GNSSデータに基づく地球超低軌道の大気密度推定」という題名でポスター発表を行いました.そして,最優秀ポスター...